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テイルズオブザワールドレディアントマイソロジー3.5 - 第二話 月夜の旅団

【第ニ話】 月夜の旅団




今日も雲一つない晴天だが、アウレアとクラトスがいるコンフェイト大森林は太陽の光を木々が遮りわずかな木漏れ日だけが二人を照らしていた

この奥にラザリスがいるのか…。まだルミナシアとジルディアは完全に融合していない今、ラザリスは世界の理が違うゆえに苦しんでないか心配だった。他にも心配事はあるが…

それが表情に出ていたのかクラトスが心配か?とたずねてきた

「ああ、正直言うと心配だ。本当にラザリスがいたとしてもその後の生活とか、俺はともかく世界の人々に受け入れてもらえるかどうか…」

「…この世界の住人に受け入れてもらえる可能性は低いだろう。一時とはいえ、この世界に驚異をもたらしたのだからな」

だよな…、そりゃそうだ。ラザリスの事情を知っているアドリビトムのメンバーならともかく、何も知らないルミナシアの民は受け入れきれないだろ

「今ここでそれを悩んでいても仕方あるまい。一人で抱え込まず、ギルドの皆と話し合って解決してゆけばいい」

「……クラトス。へっ、そーだな」

そうだ。俺は一人じゃねぇ、仲間がいてくれる。だから、俺も頑張れる。また、クラトスに気づかされちまった

俺はクラトスに礼をいってさらに奥へと進んでいく。そろそろ生物変化現象が元あった場所に着きそうだな

しかし、その場の光景は俺の期待を裏切るものであった

「誰も……いねぇな」

そこにはラザリスはいなかった。草木が鬱蒼としており、プチプリがピョンピョン跳び跳ねていた

ガセネタか…。ある程度頭においてはいたけど、やっぱ裏切られた感が半端ねぇな。クッソ、腹立ってきた

「はぁー、すまねぇなクラトス。ガセに付き合わせちまって」

「お前のせいではない」

俺とクラトスは若干イライラしつつも(多分俺だけ)元きた道を戻ろうとしたが、何かが空気を切り裂く音が聴こえ二人共左右に跳んだ

「なんだ!?」

さっきまでいた場所には鋭い針のようなものが5〜6本刺さっていた。飛んできた方を見ると人が二人落ちてきて綺麗に着地した

なんだ?こいつら。ギルドにラザリスがいるって偽情報送りつけてきたやつらか

俺が刀の柄に手をかけると気味の悪い面をつけた二人組はディセンダーであるか?と聞いてきた

いきなり襲っておいて何様かと思ったがやつらの目的を探るため会話することを選んだ

「俺がディセンダーだったらどうすんだ?」

「我々はディセンダーの捕獲が任務だ」

俺の捕獲?俺を何かに利用しようって魂胆か?捕まるつもりはさらさらねぇけど

「あの偽の情報を送ったのもお前らか?」

「そうだ」

「捕獲ってんならちょいと人数が少な過ぎねぇか?嘗めてもらっちゃ困るぜ。それにこっちにはアドリビトムの強者、クラトスまでいんだぜ」

「アウレア。気を抜かずに行くぞ」

二人は戦闘体制に入り面をつけた二人組は腰から細身の剣を取りだし襲い掛かってきた

俺は一人を相手に剣で戦い、片方はクラトスが相手をする。トリッキーな動きで、狙いが定まらなかったが次第に慣れていき次々と技を決めていく

「ちっ…!」

クラトスの相手をしていた面の奴が接近戦では不利と判断したか距離をとった

(あめぇよ、クラトスは剣だけが得意じゃねぇ!)

俺の思ったとおりクラトスの魔術によって面の奴は倒れた

「そろそろこっちも終わらせるか?」

「ふん!図に乗るな!散沙雨」

鋭い高速の連続突きが襲うが俺は全てを刀ではじいた。面で表情が見えないが焦りは感じられる

「虎牙破斬!」

隙をついてニ連続の剣激を喰らわせて吹き飛ばす。面の二人組は呻き声を上げながら立ち上がろうとするがやがて諦めたかのように倒れこんだ

「………殺せ」

「は?」

何を言うかと思えば殺せとは。偽情報でここまで来させ、あげくに襲ってきて、最後は負けたから殺せと。なんて勝手な連中だ!

「私達は任務に失敗した…。もうボスに顔向けはできない。」

「あのなぁ、殺せと言われて、はいそうですかと殺す訳ないだろーが」

「…………」

「そんな簡単に生を手放すな。お前らの事情がどうかは知らんが、次は失敗するもんか!って思うのが人だろ?一回の失敗で投げ出してんじゃねーよ」

ってあれ?なんで俺を捕まえようとした奴らを励ましてんだ俺?

なんて思っているとクラトスが近づいてきて面の二人組に言った

「貴様らが何故ディセンダーを狙うかは知らないが聞いても答えないだろう。代わりに貴様らのボスに伝えろ。ディセンダーを狙うなら我々、アドリビトムが全力で阻止するとな」

おお!クラトスかっけー!そう言われるとなんかめちゃくちゃ頼もしいな

「それは俺が代わりに伝えておこう」

するとどこからか声が聴こえ、目の前の面の二人組の背中に鋭い針が突き刺さった

「がっ…!?」

針は寸分の狂いもなく心臓のある部分に刺さっておりどす黒い血が服を染めていった。恐らくは面の二人はもう…

「そいつらはもう必要無いのでな。始末させてもらった」

暗い森林の奥から人が歩いてきた。口を布で隠し、全身真っ黒の身軽な服装の男が現れた

「テメェ…、いきなり何すんだ?」

アウレアは静かに怒りながら男を睨み付けた。男はやれやれといった素振りを見せて鼻で笑った

「任務を失敗したクズ共の正当なる罰さ。当然の行為だよ。コイツらも死にたがってたろ?」

また、いきなり出てきて刃物投げてきやがった上にごちゃごちゃと抜かしやがって!それに、こいつ仲間を…

「お前も戦うってんなら容赦しねぇぜ」

「まぁ、まて。ディセンダーの実力は見させてもらった。私らはどうやら甘く見すぎていたようだよ。その二人では歯が立たんわけだ」

男はまるで汚いものを見るかのような目で面の二人組を見る

「魔神剣・双牙ァ!」

俺は我慢できずに奴に向かって衝撃波を飛ばした。ヤロー、敵に味方する訳じゃねぇが、許せねぇ!

俺が放った魔神剣はジャンプで避され後ろにある木を斬り倒した

「おー怖いねぇ、ディセンダーはこの世界の救世主様でお優しいんじゃなかったのかい?」

「生憎そんなぬるいディセンダーじゃねぇ。すまんな」

するとクラトスに落ち着け、と諭され俺も頭を冷やし一旦刀を鞘に収めた。クラトスは一言、去れとだけ男に言い凄まじい威圧を放つ

「クラトス・アウリオン。確かに君の実力は厄介だ。それとアドリビトム。そんな君達に一つ私らの組織を知ってもらいたい。私らは『月夜の旅団』いずれディセンダー。あなたを拐いに来るのでぜひお待ちを」

それだけいうと男は暗闇の向こうへと消えた

「待ちやがれ!!」

俺が奴を追おうとするのをクラトスが引き止めて先に二人の弔いが先だと面の二人を見た。血で染まった身体にはまだ深々と針が刺さっている

俺とクラトスは面の二人組を弔い、地面に埋めた。面を外すと一人は男性で一人は女性だということが分かった

そして、ギルドへ戻り事の経緯をアンジュに説明した。アンジュに色々と気をつかわれたが大丈夫とだけ言い、クラトスには礼を言って自室へと戻った


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場所は変わって、見晴らしの良い荒野に一軒だけ佇んだ小屋があった。その屋根には肩から下は袖がなく身軽そうな黒い服装をし、額にバンドをつけ、そこから鋭い目を覗かせる少年の姿があった

少年は寝そべって目をつむると、まるで己を戒めるかのように自分の過去を振り返った

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『何故だ!何故出ていく!?』

『…………』

『だんまりか?ふざけるな!』

『…ここは昔とは変わってしまった。掟だけに囚われ、大切な事を忘れてしまっている。今のボスにはついていけない』

『…お前が行っちまったら、俺はどうすればいい!?お前が必要なんだよ!なぁ、待ってくれよ!―――!』

『………すまない』

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「……………」

少年は自分が選んで歩んだ道の上で、置き去りにした友を、静かに思い浮かべた…


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次の日の朝、俺は食堂で食事を済ませホールへと向かっていた

食堂では朝からロイドが朝食にでたトマトを残しロックスから追いかけられるわ、クラトスがこっそり他の人の皿にトマトを移すのをナナリーに見つかり怒られるわで賑やかだった

まったく、どんだけトマト嫌いなんだあの二人は…

思い出して苦笑しているとホールにアンジュ、リタ、ウィル、ニアタが揃って会話をしていた

「オッス!なに話してんだ?」

「あら、アウレア。まずは、おはよう。でしょ?」

アンジュに優しく注意されおはようと言い直し、皆からもそれぞれ挨拶が返ってくる

「実はね、フレンさんから依頼がきているの」

フレンから依頼?そういえばフレンはガルバンゾの騎士団に今は戻ってるんだったな

「どんな依頼なんだ?」

「アタシから説明するわ。話長くなるけど、寝るんじゃないわよ!」

「わ、わかったよ」

俺の質問にはリタが答えてくれた。現在、ガルバンゾ国内で夜中に連続殺人事件が続いているようだ。ここ1ヶ月でなんと被害にあった者は50人を上回る数だとか…

騎士団は犯人の手がかりがないか捜査を必死で続けているんだと、被害は更に拡大中だという。国は国民に夜は外出禁止令を出すなどの手を打ってはいるが、国民は恐怖に怯え夜も眠れず困っているそうだ

そして先週にようやく犯人の特徴が分かった事があるという

「その犯人は、紫色の髪の毛で体格はすごく大柄な男だって」

「なるほど、けどガルバンゾの騎士にも強い奴はいるだろ?特徴と夜中に出るって分かってれば捕まえられるんじゃ…?」

するとアンジュが俺の疑問に対して頷き、その理由を説明してくれた

「それがね、騎士団の中隊長と数人の部下が犯人と戦って…全員殺されたの」

なにっ!?いつも訓練をしている騎士団の中隊長クラスでも勝てないって相当の手練れだな

「それから騎士団でもこの事実を受け止めて騎士団のほとんどを犯人の捜索に回そうって意見がでたんだけど、たかが一人の男に全騎士を使うなど恥だっていう意見もでて騎士団の中でも色々大変らしいの」

するとリタが全くバカバカしいわ!と呆れていた

「つまり、フレンの依頼って…」

「そうだ。フレンは騎士団の隊長の立場で動くにも動けない。騎士団もこの調子では犯人は捕まらないと判断し、極秘で俺たちに依頼をしたというわけだ」

ウィルは眼鏡をくいっと指で上げて腕を組んだ。相変わらず魔術ばっか使う後衛なのに筋骨粒々としてやがる

「んじゃ、その極秘任務に参加するメンバーを召集しないとな!」

「ええ、もう決まってるわ♪アウレア、すずちゃん、セネル君、ティアの四人よ」

さっすが、早いな。少数精鋭ってとこか?まぁ、いつものクエストとあんま変わらない人数だけど

「ちょいと待ってくれ」

ん?この声は…。俺たちは声がした方を見るとそこにはユーリが愛刀の二番星を肩に担いで立っていた

「…あちゃー。アンタにだけは知られたくなかったのに」

「どういう意味だよ」

「アンタが聞いたら絶対行くって言うに決まってんでしょ!!」

「おー、わかってんじゃねぇか」

わかってんじゃねぇかじゃないわよー!とリタがブンブンと拳を振り回す。この依頼のメンバーからユーリを外したのはもちろん、ガルバンゾ国でユーリが指名手配されているからである

「しかし、ユーリ。指名手配の方はどうするつもりだ?」

おお、ウィルの鋭いツッコミ。それにユーリはどう答えるか?

「ま、ソコは安心してもらっても構わないぜ。いい隠れ家があるからよ」

「いい隠れ家?」

「敵さんは夜中しか出てこねぇんだろ?それに夜は外出禁止令ときたもんだ。昼さえ外に出なけりゃ見つかりゃしねぇよ」

ユーリはニヤリと不敵に微笑んだ。こういう時、ユーリからはなんとも言えぬ安心感が得られるんだよな〜。根っからの兄貴分体質だよな

「う〜〜〜ん。じゃあ、本当に大丈夫なら同行を許可します」

アンジュもそれをユーリのそれを感じたのか暫く唸ってから同行を許可したのだった





次回予告

アウレアとクラトスを襲った敵、『月夜の旅団』とは?一体何が目的でディセンダーを狙うのか?
そして、ガルバンゾ国を騒がせる凶悪な殺人鬼の魔の手が迫る!
殺人鬼の実力はいかに!?


次回
【第三話】
〜忍び寄る魔の手〜


[14/12/04 20:45 ミズッシー]
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